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2011年9月

2011年9月11日 (日)

【USオープン】強さを見せつけ、セリーナが決勝進出

 セリーナ・ウィリアムズはあと1月足らずで30歳になる。ピークを過ぎたような印象もあったが、いやいやどうして。今が一番強いのではないか。
 キャロライン・ウォズニアッキとの準決勝では11本のエースをたたき込み、グラウンドストロークのウイナーは16本、さらにネットで奪ったポイントが17本もあった。これなら、相手の3倍近い34本のアンフォーストエラーを犯しても負けるわけがない。
 たとえボールの行方を追わなくても、どちらが優勢か一目瞭然だった。セリーナがグラウンドストロークを打つ位置はほとんどベースライン付近だった。サーブでもレシーブでも先制攻撃を仕掛けていく。グラウンドストロークの1球目で相手を崩す。そうして、スッと前に入っていく。だから、次のショットにはより角度がつき、連続攻撃でネットプレーにもつなげやすいのだ。
 逆にウォズニアッキは終始、ベースライン後方に押し下げられた。1球目から守勢に回り、カウンターのチャンスもなかなか来ない。第2セットで4ゲーム奪ったのが唯一の抵抗。セリーナのワンサイドゲームだった。
 四大大会の準決勝ではこれで17勝3敗。全米では3年ぶりの決勝で、通算4度目の優勝を狙う。オープン化以降、全米で4度優勝した選手と言えば、マーガレット・コート、ビリー・ジーン・キング、クリス・エバート、マルチナ・ナブラチロワ、シュテフィ・グラフに並ぶ記録。セリーナは、あと一つでテニス界のレジェンドと肩を並べることになる。

【USオープン】フェデラー、無念の逆転負け。決勝進出を逃す

 ショッキングな光景だった。2セットアップを追いつかれ、さらにマッチポイントを挽回されて、ロジャー・フェデラーが敗れ去った。
「ゲーム運びは完璧だった。でも、仕上げに失敗してしまった」
 会見でのフェデラーは、いつものように穏やかな口調ながら、言葉の端々にフラストレーションが顔を覗かせた。それはそうだろう。ランキング1位のジョコビッチを土俵際まで追いつめながら、最後にひっくり返されたのだ。
「あの1本だ。あれですべてが違ってしまった」
 もちろん、マッチポイントでのジョコビッチのリターンエースを指している。
「もう少しいいサーブを打つことはできたと思う。でも、そういう問題じゃないんだ」。
 フェデラーは言う。
「どうやったら、相手のマッチポイントであんなリターンが打てるのか、理解できないよ」
 ジョコビッチが一か八かのギャンプルプレーに出て、賭けに勝った、と言ったら乱暴すぎるだろう。ジョコビッチも「ロジャーのような選手と戦うときは、リスクを冒す必要がある」と語っただけだった。
 あのショットを成功させたのは、ジョコビッチの勇気であり、また、彼の運だ。入るかは入らないか、確信はなくてもチャレンジしてみる。そもそも、テニスとはそんな瞬間の繰り返しだ。
「受け入れて、切り替えるしかないね」。
 フェデラーは自分に言い聞かせているようだった。
 肩を落としてアーサー・アッシュスタジアムを去ろうとしたフェデラーだが、「5度のチャンピオン、ロジャー・フェデラー!」とアナウンスが流れると、振り向いて右手を挙げ、ファンの歓声に応えた。再び歩き出したフェデラーは、真っ赤なリストバンドを腕から外し、観客席に放り投げた。激しく肩入れしてくれたニューヨークの観客への、別れの挨拶だった。

2011年9月 6日 (火)

【USオープン】ペトコビッチが全豪、全仏に続く8強入りを果たす

 今シーズン、グランドスラムで3回以上、ベスト8進出を果たした選手は一人しかいない。戦国時代を象徴するエピソードだが、その選手がアンドレア・ペトコビッチだといえば、意外な感じがさらに強くなるだろう。この8月に初めてトップ10入りを果たした23歳。この全米の期間中の9日に(もちろん勝ち残っていればの話だが)24歳の誕生日を迎える。じわじわと力をつけ、昨年あたりから開花期を迎えた。
 今季、全豪でキャリア初のグランドスラム8強入りを果たすと、全仏でも8強入り。ウィンブルドンは3回戦止まりだったが、この安定感は、まさにツアー屈指だ。当然、勝ち星も増え、シーズンの通算勝利数はウォズニアッキに次いで2位タイにつけている。
「きっかけはこの全米だったわ。去年、初めて4回戦に勝ち上がって、私の自信は完璧なものになったの。自分自身を信じられるようになったわ」
 コートで見せるダンスもすっかり有名なった。ダンスとして見たらとても評価に値するようなものではないが(失礼)、女子選手が、あんな剽軽なパフォーマンスを見せるという、その度胸と愛嬌が素晴らしい。
 準々決勝の相手は、第1シードのウォズニアッキ。まだ4強入りしたことのないペトコビッチだが、これだけの成績を残している自分を信じ切ることができれば、道はひらけるだろう。

2011年9月 3日 (土)

【USオープン】初陣の伊藤竜馬は1回戦敗退

 エントリー締め切りの時点では、あと数人のところで本戦枠からもれた伊藤竜馬だったが、欠場者が出て本戦に繰り上がった。記念すべき四大大会初出場だ。1回戦の相手は第25シードのフェリシアノ・ロペス(スペイン)。普通は緊張するグランドスラムデビューだが、試合後の竜馬は「緊張せず、思い切りやれた」。繰り上がりの本戦入りだけに、「僕より下の選手はいない」と謙虚に臨んだことで、緊張から解き放たれたのだ。
 ストレートセットの完敗。力の差は明らかだったが、「思い切りやれた」というのがいい。力を出し切ることができれば、相手との差や自分自身の課題も見つけられる。竜馬は「(ランキング25位は)遠いと思う。サーブをキープしないと始まらない」と反省した。
 インタビュールームでも、ハキハキと、率直に話した。彼の真面目さ、率直さと素直さ、そして明るさは初対面の記者にも好印象を与えただろう。
 これは大きな長所だと思う。真面目だから、くたくたになるまで自分を追い込める。素直だから、多くのものを吸収できる。明るいから、力の差を感じても、また頑張ろうと思えるのだと思う。彼は決し“うまい”タイプではない。しかし、一歩ずつ、だが着実にテニスがよくなっている。これは彼のパーソナリティーによるものが大きいと思う。
「頑張れ、竜馬!」--彼は、そんなふうに声援を送りたくなる選手でもある。

秋山英宏
Akiyama Hidehiro

秋山英宏

1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行う。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。日本テニス協会広報委員会委員。