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2011年7月

2011年7月25日 (月)

【デビスカップ 日本対ウズベキスタン】伊藤竜馬はイストミンに完敗

 デビスカップ・アジア/オセアニアゾーン1部2回戦は日本がウズベキスタンに4-1で勝利し、9月のワールドグループ入れ替え戦でインドと対戦することになった。伊藤竜馬は初日のシングルスで相手のエース、デニス・イストミンと対戦、4-6,4-6,4-6と完敗した。
 3セットともワンブレークで決着。拮抗した試合ではあったが、内容は竜馬の完敗だった。イストミンがうまかった。敵地での対戦。しかも会場のブルボンビーンズドームは摂氏27度、湿度80%という厳しい環境だった。空調設備がなく、仮設の冷房機を入れてなんとかこの温度まで下げたものの、じっとしていても汗が流れる。乾いた気候のウズベキスタンから来た選手には過酷なアウェーの洗礼だ。だが、デ杯やツアーで経験豊富なイストミンは、余計な力を抜き、省エネテニスに徹した。コートサーフェスの速さを生かし、キレのあるサーブとコースをついたサーブでポイントを重ねていく。
 「サーブのコースがしっかりしていて、ファーストサーブはもちろんよかったし、セカンドサーブはデュースサイド、アドサイドともフォアハンドに入れてきた。リターンが返らない回数が多く、きつかった」と言うように竜馬はサービスブレークのチャンスを作れない。一方、竜馬のサービスゲームでは、のらりくらりと戦いながら、サービスブレークの機会を探っていた。「イストミンのスマートな戦術にはぐらかされた」と竹内映二監督。これはまさにそういう試合だった。竜馬はブログで「ここ一と言う所で、相手の集中力がアップし攻められて自分が消極的になってしミスに繋がってしまいました」と振り返った。
 対戦は、錦織圭が単複に3勝(複のパートナーは添田豪)を挙げる活躍で日本の勝利。1回戦のフィリピン戦では勝利の立役者となった竜馬も、今回は脇役だった。トップ50にも入っていたイストミンとは、試合経験でも勝負勘でも差があった。だが、今の竜馬にはこうした敗戦も必要だと思う。日本選手としては規格外の「ドラゴンショット」を持つ竜馬だが、経験不足は否定できない。虎視眈々と待ち構え、最後に勝利を盗んでしまう狡猾さは彼の足りない部分だ。だからこそ、こういう試合をしながら、一戦一戦、覚えていけばいい。
 個人戦に戻った竜馬は、アメリカ・グランビーのチャレンジャーで8強入り、さらにアトランタのATPワールドツアー大会では、1回戦を突破。これはツアーレベルでの初勝利だった。彼は敗戦を糧にできる選手だ。敗戦から学ぶことができる選手なのだと思う。7月25日付けのATPランキングでは自己最高の104位に浮上した。一歩また一歩と、竜馬はワールドクラスの選手に成長している。

2011年7月 3日 (日)

【2011年ウィンブルドン】クビトバがグランドスラム初制覇!

 第8シード、ペトラ・クビトバが女子シングルスを制した。昨年のウィンブルドンは、ランキング62位ながらベスト4入り。この成績はフロックではなかった。
 今年の全豪でもベスト8入りを果たし、現時点でのWTAランキングは8位。今季はすでにブリスベン、パリ(室内)、マドリードで優勝している。WOWOWで解説をしている杉山愛さんは、全仏でも彼女を優勝候補に挙げていた。実力は申し分ないと思う。しかし、このウィンブルドンで、彼女を単独で優勝候補に推すには躊躇があった。一つには、我々が疑い深くなっているからだろう。ランキング1位のキャロライン・ウォズニアッキを筆頭に、有望な若手はたくさんいても、本当にグランドスラム優勝の域に達している選手はいるのか、と我々は疑いの目で見ていた。
 全豪優勝のキム・クライシュテルスや全仏を制した李娜のように、このところ、十分な経験を積んだ選手が四大大会で優勝する傾向もある。実際、期待の若手がグランドスラムの決勝で力を出せずに敗れていく場面も何度もあった。クビトバがそうならないという保証はなかった。
 だが、今日、初めてグランドスラム決勝の舞台に立ったクビトバは、こう話している。
「コートに立って驚いたわ。なぜなら私は、ウィンブルドンの決勝の舞台に立っているということではなくて、ボールそのものに、そのポイントに集中できていたから」
 これと正反対のコメントを何度も聞いた。決勝で力を出せなかった選手は、舞台そのものを恐れ、我を失った。しかし、彼女はそうではなかった。
 クビトバはこうも言っている。「去年の私はまだ若く、彼女(セリーナ・ウィリアムズ)を倒せるとは思っていなかった。でも、今年はそれができると思っていた」。
 彼女は、これまでの女王候補と違って、メンタル的にも十分な準備ができていたのだと思う。女王不在の女子テニス界に、次代の女王候補の本命出現である。

2011年7月 2日 (土)

【2011年ウィンブルドン】時代は変わるのか

 ノバク・ジョコビッチが決勝に進み、来週月曜に発表されるランキングで初めて1位になることが確定した。ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルが04年2月から387週、二人で独占してきた「王座」を、第3の男であったジョコビッチに譲るのだ。
 フェデラーは準々決勝でジョーウィルフリード・ツォンガに2セットアップから逆転負けを喫した。フェデラーが四大大会で2セットアップから敗れたのは初めて。これまで2セットアップとしたときは178勝0敗という記録が残っている。こうした数字の一つ一つが、フェデラーの強さを物語り、同時にフェデラー王朝の終わりが近づいていることを予感させる。
 ただ、フェデラーは当然ながら、そうした見方に同意しない。〈ひとつの時代の終わりを感じるか〉という記者の質問に、こう答えている。
「そうは思わないね。2回戦でストレート負けしたわけでも、バカな試合をしたわけでもない。二人とも素晴らしい試合をしたんだ。賞賛に値する試合だった。だから、そんなに先回りして考える必要はないのさ」
 フェデラーは、まだグランドスラムのトロフィーを掲げる機会があるはずだ、とも語っている「それがないと思っていたら、僕はここにいないよ」と。
 センターコートからの退場の際、フェデラーはバッグを背負ったままで、帰り支度の済んでいないツォンガをしばらく待っていた。その表情が涼しげだった。この光景が画面に映し出された時、BBCのコメンテーターは、こう語ったのだ。「フェデラーは(敗れても)まだ王者だ」。

2011年7月 1日 (金)

【2011年ウィンブルドン】リシキの快進撃も準決勝でストップ

 ウィンブルドンでは、ワイルドカード(主催者推薦)から決勝進出を果たした選手はいない。前哨戦のバーミンガムで優勝し、ウィンブルドン準々決勝までグラスコートで11連勝してきたザビーネ・リシキの快進撃も、準決勝でマリア・シャラポワに止められた。
 09年のウィンブルドンで8強入りの実績を持つリシキがワイルドカードというのは、ランキングを大きく落としていたからだ。昨年、左足首を痛め、5カ月近くツアーを離脱。この3月には218位まで下降した。そこから這い上がってのベスト4だった。
 前にも書いたが、先の全仏オープンで、ズボナレワとの試合中にけいれんを起こし、懸命に--あえて書くなら、むさぼるように水分と栄養を摂取して最後まで戦った姿が印象深い。最後は全身けいれんで動けなくなり、担架の世話になった。その瞬間までは、何としても戦い抜くという意志の力がケイレンの痛みを制していたのだろう。
 ビッグサーバーだが、どちらかと言えば不器用な選手だ。ただ真面目に、貪欲に取り組んで今の地位を築いた。全仏優勝の李娜を破ってのベスト4。3回戦では日本期待の土居美咲を破った。このウィンブルドンで、最もインパクトを残した選手の一人であることは言うまでもない。

秋山英宏
Akiyama Hidehiro

秋山英宏

1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行う。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。日本テニス協会広報委員会委員。