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2011年6月

2011年6月29日 (水)

【2011年ウィンブルドン】錦織圭、ダブルスは2回戦止まり

 ダブルスで初戦を突破し2週目に残ったものの、ロドラ/ジモニッチのダブルス巧者には歯が立たず、2回戦敗退。錦織のウィンブルドンが終わった。
 前哨戦のイーストボーンでは4強に進出し、芝でのプレーに自信を深めていただけに、シングルスの1回戦敗退は残念だった。試合直後には「この経験を無駄にしないように、今後に生かしたい」と話した錦織だが、時間が経ってあらためて振り返り、「シングルスに関しては悔いが残る。どんな相手でも、1回戦負けは腑に落ちないというか、悔しさがある」と話した。おそらく、気持ちを整理しようと努め、それでもまだ折り合いをつけかねているのだろう。
 昨年のナダルに続き今回も優勝経験者、02年の覇者ヒューイットと1回戦で対戦。ナダルとはまったく別のタイプの強者と対戦したことで、経験値はまた上がったことだろう。なぜ、このヒューイットがナンバーワンになれたのか、なぜウィンブルドンを制することができたのか。ボールを打ち合って得た情報量は大きかったのではないか。
 ダブルスで2回戦に進出したことで、単複計3戦をこなした。「ダブルスをプレーしたことで、リターンもよくなった。来年につながるダブルスだった。去年よりも芝でのプレーが確立されている。動きも、グラウンドストロークもしっかりできるようになっている」と収穫の大きさを口にした。
 次の戦いはウズベキスタンとのデビスカップ。久しぶりに日本のファンの前でプレーを披露する機会が訪れた。ブルボン・ビーンズドームでは、前回の09年デ杯中国戦から一回り大きくなった、そして、昨年の楽天オープンともひと味違う、今の錦織圭が見られるはずだ。

2011年6月25日 (土)

【2011年ウィンブルドン】リシキが全仏女王の李娜を破る

 ローランギャロスを去った姿が対照的だった。李娜はアジア選手として初めてグランドスラムを制覇。人生最高の瞬間を味わった。一方のザビーネ・リシキは予選からの出場を強いられた。本戦2回戦ではベラ・ズボナレワに逆転負け。最後は全身けいれんに見舞われて動けなくなり、担架に乗せられてコートを去った。
 09年のウィンブルドンでベスト8に入り、一躍、注目を浴びたリシキ。女子で屈指のビッグサーブと、ガッツむき出しのプレースタイル。ドイツで生まれ、錦織圭と同じIMGアカデミーを拠点活動している。09年8月には自己最高の22位までランキングを上げた。ところが、2010年春に左足首を痛め、5カ月近くツアーを離れる。復帰後も調子は上がらず、トップ10入りも視野に入っていた選手が、前述のようにこの全仏は予選を戦ったのだ。
 ズボナレワ戦は、見ている限りでは、もう少し早く棄権してもよかった。しかし、彼女の執念がそれを許さなかったのだろう。その勝利への飢え、執着心がこのウィンブルドンで実を結んだ。全仏を制した李娜を破る番狂わせ。コートで喜びの涙を流したリシキは、インタビューでこう話した。
「ケガからの復帰は長く苦しい道だった。ゼロからのスタートだった。左のふくらはぎには筋肉がなくなってしまい、私は歩くことから練習しなければならなかったのよ。でも、だからこそ、今、この瞬間の充実感があるのね」

2011年6月20日 (月)

【2011年ウィンブルドン】優勝争いのカギを握るウィリアムズ姉妹

 女子テニス界は軸となる選手がいない混戦状態が続いている。その要因の一つがウィリアムズ姉妹の離脱だった。ビーナスは今年の全豪オープンに出場してから腹筋痛で5カ月近くツアーを離れた。セリーナは昨年のウィンブルドンを制したのち、レストランで割れたガラスを踏んで負傷。さらに肺血栓を発症し、1年近く公式戦に出られなかった。セリーナの四大大会13勝とビーナスの7勝は、ともにオープン化以降の最多優勝記録10傑の一角を占める。歴史に残る二人のプレーヤーを欠けば、ツアーが活気を失うのも致し方ないだろう。
 だが、二人はウィンブルドンの前哨戦イーストボーンでそろって復帰。優勝にはからめなかったが、注目度は圧倒的だった。
 セリーナはウィンブルドン開幕前の会見で、病床に伏していた状況を「死の床」と表現している。「フィジカル的には、もちろん最高であるわけはないし、メンタル的にも落ち込んだわ」。だが、彼女はすぐにこう続けた。
「でも、それが普通だし、予想できたこと。今はまた前を向いて、動き出すだけだと思っている」
 芝では圧倒的な力を発揮するウィリアムズ姉妹。ウィンブルドンではビーナスが5度、セリーナは4度優勝している。心身のコンディションは100%まで戻っていなくても、二人はグランドスラム2週間の戦い方をよく知っている。優勝争いの本命とまでは言えないが、カギを握る存在であることは間違いない。来週末の女子シングルス決勝で、スコアボードに「Williams」の名前が映し出されている可能性は決して低くない。

2011年6月 6日 (月)

【2011年全仏オープン】フェデラー、惜しくも優勝を逃す

 全仏の決勝でナダルとフェデラーが戦う場面は何度か見たが、最近の対戦はナダルの強さばかりが目立っていた。フェデラーが3セットで計4ゲームしか奪えなかった2008年の決勝が象徴的だ。スコアもそうだが、このサーフェスに限っては、体から発散されるインテンシティ(力強さ)という点で、両者には大きな差があるように見えた。
 しかし、今日の試合はそうではなかった。立ち上がりから硬かったのはナダル。フェデラーは序盤から攻撃的で、ラリーを支配した。フォアハンドは火を噴き、バックハンドのドライブにも自信が蘇ったように見えた。常勝の宿命を背負っていたフェデラーは、今大会、第3シードの立場を楽しんでプレーしていたのかもしれない。
 第1セット、5-2で迎えた第8ゲームのセットポイントをものにしていたら、と思わずにいられない。フェデラーのドロップショットがあと数センチ内側に落ちていたら。第2セット、雨の中断から再開直後にフェデラーがブレークバックに成功した。ここでは彼に流れが来たものと思ったが、タイブレークまでその勢いは持続しなかった。
「グランドスラムの決勝に戻ってこられたことが重要なんだ。いいプレーを続けられたことがね。今日は良い試合だったよ。優勝できなかったのは残念だが、この大会には満足しているよ」。
 表彰式を待つ間は落胆の色が濃かったフェデラーだが、記者会見に現れた彼はいつもの威厳と快活さを取り戻していた。

2011年6月 5日 (日)

【2011年全仏オープン】フェデラーがジョコビッチの連勝をストップ

「ここにいるわれわれ(プレス)のほとんどが、2008年のウィンブルドン決勝(ナダルd.フェデラー)に匹敵する最高の試合、ビンテージもののテニスだったと思っている。その見方に同意するだろう?」--記者会見では、こんな質問があった。また、「お礼を言わせてほしい。なぜなら、僕が生涯に見た最高のテニスだったからだよ」と興奮気味に話す記者までいた。
 ナダルが「現在の世界最高のプレーヤーと史上最強のプレーヤーの対決」と表現した準決勝はフェデラーが勝利を収め、ジョコビッチの連勝を止めた。ランキング1位に駆け上がろうとする若者の前にテニス界の王者が立ちふさがった。これは、ナダルとジョコビッチの対決ムード一色の世論に対する意地だったのか。
 いや、この試合はそうした物語を超越していた。素晴らしいグラウンドストロークの応酬だった。両者のコートカバーリングの見事さと言ったらなかった。フェデラーは終始、試合をコントロールし、ナーバスさをのぞかせる場面はなかった。
 フェデラーが勝つとすれば、連勝記録やランキング1位の座が目の前にちらついて硬くなったジョコビッチの隙をつくくらいしかないと思っていたが、これはそういう試合ではなかった。ショットの精度と威力、動きのスピードでも、フェデラーは引けを取らなかった。強いフェデラーがそこにいた。

2011年6月 2日 (木)

【2011年全仏オープン】トップ10入り目前でペトコビッチ無念の敗退

 アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)の4強入りはならなかった。1日の準々決勝、全豪オープン4回戦で破ったマリア・シャラポワ(ロシア)に雪辱を許し、その全豪に続いて8強にとどまった。
 それにしても、ペトコビッチのここ数年の躍進はめざましい。07年、豊田市で開催されたフェド杯、日本-ドイツ戦で代表入りしたが、出場なし。チームの「補欠」だった選手が今やWTA自己最高12位の強豪となった。
 出生地はボスニア。祖国の歴史を知ろうと猛勉強、政治に興味を持って大学で政治学を勉強したインテリの一面も持つ。この日の会見では記者のフランス語の質問に「OK、じゃ、フランス語でいってみる?」と自ら持ち掛け、しばらくフランス語でのやり取りが続いた。仏語、独語、セルビア語を話し、もちろん英語も堪能だ。
 もっとも、そうしたバックグラウンドより、彼女はコート上でのダンスのほうが有名かもしれない。今大会は4回戦でマリア・キリレンコ(ロシア)を破り、ムーンウォークを披露した。勝利の瞬間のガッツポーズや試合中のリアクションもとびきり派手。「私はドイツ人だが、心は常にセルビアにある」と公言しているように、その熱い魂を観客の前でコートで表現しようというところなのか。クールなドイツ人とはひと味ちがうのよ、と言わんばかりだ。
 決勝に進出すれば、ドイツ選手ではアンケ・フーバー以来19年ぶり史上6人目のトップ10入りの可能性があった。この敗退で快挙はおあずけとなったが、しばらくこの選手には注目してみたい。

2011年6月 1日 (水)

【2011年全仏オープン】フェデラー、「第3の男」から一気に主役へ

 「僕を忘れるなよ」。フェデラーの存在感が日増しに強くなっている。今大会は第1シードのラファエル・ナダルと今季無敗のノバク・ジョコビッチに注目が集まり、第3シードのフェデラーはノーマークとさえ言われていた。ところが、いまだ本来のショットを見せていないクレーの王者ナダルとは対照的に、好調ぶりを見せつけている。
 彼も人の子。「2強」が注目されることでプレッシャーがなく、よほどのびのびと戦えているのだろう。持ち前のショットメイクが冴えに冴えている。すべてストレート勝ちで4強入り。地元のガエル・モンフィスとの準々決勝こそ2時間半の試合になったが、4回戦まではすべて2時間以内に片づけている。そのモンフィス戦、ブレークアップしたところで少しプレーが雑になったが、危ない場面は一度もなかった。
 グランドスラムでの準々決勝進出はこれで28大会連続となり、オープン化以降の最長記録を更新した。次の相手はジョコビッチ。間違いなく、これは大一番になる。

秋山英宏
Akiyama Hidehiro

秋山英宏

1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行う。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。日本テニス協会広報委員会委員。