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2010年9月

2010年9月11日 (土)

【2010年USオープン】日本の高校生代表・近藤大基の挑戦

今年も全国選抜高校の個人戦で優勝した男女選手、近藤大基(湘南工大附)と今西美晴(京都外大西)がワイルドカードで予選に挑戦した。今西は予選で敗れたものの、近藤は見事、本戦に進出した。

1回戦の相手はドイツのビッグサーバー。近藤はリターンが思うように返らず、自分のテニスをさせてもらえない。2-6,2-6で敗れた近藤の目に、悔し涙が光った。

近藤は「今まで受けたことがないようなサーブ。テニスをやっていて初めて、ブレークできる気がしないと思った」と完敗を認めた。だが、そのあとの近藤のコメントがよかった。

「では、収穫はあった?」と聞くと、即座に「それはもう…」という言葉が返ってきた。「グラウンドストロークは十分通用していた。リターンとサーブは2段階くらい上げないと通用しない」。彼は世界との距離を自分の体で感じたのだ。

卒業後は大学進学を考えていたが、グランドスラムの舞台に立って、気持ちに微妙な変化が生じた様子だ。「世界でやってみたいという気持ちが高まった」と近藤。「初めてのグランドスラムで、予選を勝てたことはすごく自信になる。これくらいまでが自分の勝てるラインというのが分かった。(今日の相手を)一年後に倒さないと、という気持ちです」

この完敗は、決して無駄にはならないだろう。

2010年9月10日 (金)

【2010年USオープン】フェデラーがセーデリングに雪辱

ファンにとってはこたえられない快勝だろう。今年の全仏準々決勝で敗れたロビン・セーデリングを相手に、2時間足らずのひとり舞台だった。

この試合で機能したのはフェデラーのサーブ。64%の確率で入ったファーストサーブで、試合を完全に支配した。ファーストサーブのポイント獲得率は86%。第2セットに限っては、16本ファーストサーブを入れて15本がポイント獲得につながった。その確率94%。これはなかなか見られる数字ではない。

サーブだけではない。ブレークポイントはほぼ一発でものにした。ブレークチャンスが6本あって、ブレークが5回。これだけでも、いかにフェデラーが盤石だったか、集中が高かったか、分かるだろう。

この夜は冷たい強風が吹いたが、これもフェデラーのプレーの妨げにはならなかった。

「集中が乱れるようなことはなかったよ。だって、トスが流れたら、やり直せばいいだけの話だよ」

準決勝でノバク・ジョコビッチ、さらに、順当にいけば決勝でラファエル・ナダルと強敵が待ち構えるが、この試合の出来なら、ジョコビッチもナダルも恐れるに足らず、といったところだろう。

2010年9月 9日 (木)

【2010年USオープン】錦織圭が世界13位のチリッチを破る

男子シングルス2回戦、錦織は4時間59分の死闘の末に、世界ランキング13位のマリン・チリッチ(クロアチア)を破った。

チリッチ自身、試合後には「両者がベストのプレーを出し合った試合ではなかった」と話しているが、彼の出来はどうだったのか。サーブの確率は52%。エースは13本。ファーストサーブが入った時のポイント獲得率は67%。どれも平凡な数字だ。いいときのチリッチは、もっとサーブからの展開に迫力がある。だが、これは錦織が相手のサーブによく食い下がった結果でもある。

トータルウイナーは54本と、錦織の47本を上回った。錦織のフォーストエラーは59本で、チリッチの49本より多かった。この数字から、チリッチが攻撃的なショットで錦織を苦しめたことが分かる。錦織のアンフォーストエラーは77本で、チリッチは93本。これは錦織がまさったが、自分からのエラーは攻撃的な選手には付き物だ。

なにより、錦織にフォアハンドで強打させないように、深いボール、弾道の低いボールを高い精度で打ち込んでいたことが印象に残る。試合は13番という小さなコートで行われ、私はコートのすぐ近くの席で観戦したので、ボールの迫力は十分に伝わった。切れ味は今ひとつだったが、その分、鈍器で殴りつけるような効果があったように感じた。

そのチリッチと5時間戦った末に、勝利を収めた錦織。両者のベストではないが、錦織はこの条件でできる限りのことをした。これは、彼の勝負に対する恐ろしい執念を感じさせる試合だった。また、彼のフィジカルとメンタルが一級品であることを知らしめる試合だった。

2010年9月 2日 (木)

【2010年全米オープン】錦織圭が相手の途中棄権で2回戦進出

ロックミュージック。案内のアナウンス。観客の談笑する声。全米オープンの会場、ニューヨーク・フラッシンングメドウのナショナルテニスセンターでは、コートにいると必ずどこかからノイズが聞こえてくる。だが錦織圭はそんな全米オープンが好きだという。一昨年は18歳で4回戦に進出し、センセーションを巻き起こした。その全米で、2年ぶりの勝利を挙げた。相手の途中棄権でも、勝ちは勝ち。もちろん獲得できるポイント数にも変わりはない。トップ100復帰を目指す錦織には、なによりのプレゼントだ。

全開とはいかなかった。相手のコロレフが「やりにくい選手。フラット系で、深いところからでもハードヒットしてくる」(錦織)ということもあって、目指す攻撃的なテニスを貫くことはできなかった。第1セットは3-0から3-4と逆転され、結局、タイブレークにもつれた。しかし、このタイブレークが圧巻だった。錦織はここでとびきりシュアなテニスを見せた。それまでは攻めるのか守るのか迷っているような様子も見られたが、ここではやるべきことが明確だった。タイブレークのスコアは7-0。錦織はこれで流れを引き寄せた。

コロレフは第2セット開始前にトレーナーを呼び、右腕の治療を受けた。そして、錦織の5-2となったところで、とうとうリタイア。錦織の2回戦進出が決まった。「第1セット5-6からのサービスゲームで『もっと打っていこう』と決めた。そこから変われました」と錦織。「第2セットは(自分でも)見違えるようになった」と満足そうな表情を見せた。

2回戦の相手は第11シードのマリン・チリッチ(クロアチア)。「(初対戦の)2年前は何もできずにやられた。でも、(当時より)レベルアップしている」と錦織は静かに闘志を燃やしている。

秋山英宏
Akiyama Hidehiro

秋山英宏

1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行う。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。日本テニス協会広報委員会委員。