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2010年6月

2010年6月29日 (火)

【2010年ウィンブルドン】ジュスティーヌ・エナン、無念の4回戦敗退

念願のタイトルに、またも手が届かなかった。今年の初めにカムバックしたエナンは、ウィンブルドンのタイトルをまだ手にしていないことを復帰の理由に挙げた。しかし、大会が第2週に入ったばかりのところで、夢は早くもついえた。

4回戦でキム・クライシュテルスと当たる厳しいドローだった。しかも第1セットの序盤にコートで転倒し、右ひじの腱を痛めた。プレーへの影響については「今は分からない」とエナンは言ったが、サーブとバックハンドに違和感があったことは認めている。大きな選手に立ち向かうために常に全力を出し切らなくてはならない彼女にとって、このハンディは大きかっただろう。

ただ、彼女はすでに来年を見据えている。実は大会の開幕前から「今回は優勝を狙える位置にいない」と話していた。この日の試合後も「今はまだ過渡期であり、改良すべき点がたくさんある。本当に重要なのは来年」というのだ。

今日の対戦相手クライシュテルスは昨年、カムバック早々の全米オープンで優勝を飾った。結婚、出産を経て、テニスというスポーツを純粋に楽しむことで手に入れたタイトルだった。エナンも復帰にあたり、「テニスを離れている間に人間的に成長した」とは話していたが、テニスに対する取り組み方そのものは変わっていないはずだ。彼女にとってテニスとは、あくまでも「究める」ものである。楽しんで勝つもの、ではない。だからこそ彼女は来年を見据えるのだろう。

夢は、ついえたのではない。本当の勝負はまだ先で、そこまでの一日一日の鍛錬こそ、エナンがテニスに取り組む理由なのである。

2010年6月25日 (金)

【2010年ウィンブルドン】歴史的な1日

2010年6月24日は、ウィンブルドンの長い歴史でも記念すべき1日となった。一つにはジョン・イスナー(米国)とニコラ・マユ(フランス)の史上最長試合が3日目にしてようやく決着したこと。そして、エリザベス女王が33年ぶりに観戦に訪れたことである。

ウインブルドンでは最終セットはタイブレークシステムを採用していない。イスナーの試合はゴールの見えないマラソンのようだった。しかも、少しでも足を踏み外したら奈落の底に転落する、決死のレースだった。日没順延を2度繰り返し、3日間に及んだ試合は、ファイナルセット70-68で決着した。試合時間11時間5分はテニス史上最長。総ゲーム数183も1試合での最多ゲーム数記録となった。

エリザベス女王は“ヘンマンヒル”に面したアオランギテラスから、通路に並ぶ観客の歓迎を受けながらセンターコートの建物まで徒歩で移動。到着を待ち受けたロジャー・フェデラー(スイス)、セリーナ・ウィリアムズ(米国)らトップ選手と言葉を交わした。

セリーナはその日の午後に行われた試合後、今も興奮さめやらぬ、といった様子で、こう語った。

「女王に会えるなんて、驚きよね。まさに歴史そのものよ。正直、胸が一杯で、何を話したか覚えていないわ。おそらく『陛下、お会いできてうれしいです』とか言ったと思うんだけど、ま、アメリカ式の挨拶ね。それで女王が話し始めたんだけど、私は『陛下』とか、それくらいしか言葉を返せなかった。まあ、私のことを覚えていただけたとは思うけど(笑)」

2010年6月23日 (水)

【2010年ウィンブルドン】くやしさばかりの敗戦。錦織-ナダル戦

錦織圭とラファエル・ナダル。期待の一戦だった。ウィンブルドンのセンターコートに日本の男子選手が登場するのは1996年の松岡修造(相手はミヒャエル・シュティヒ=ドイツ)以来14年ぶり。当時の松岡は雰囲気に慣れるのに一所懸命の様子だったが、錦織はずいぶん落ち着いていて、地に足が着いている印象を受けた。

ただ、相手は世界ナンバーワンのナダル。態度が落ち着いているのと、自分のプレーができるかどうかというのはまた別の話だ。

錦織のフォアハンドがなかなか炸裂しない。ナダルの返球が厳しかったこと、また、コースをついたボールがことごとくナダルに拾われたこともあるのだが、根本的な理由は、錦織がフォアハンドを打ち抜いていなかったことではないか。錦織はこう振り返る。

「もうちょっとフラットでチャンスボールを打っていこうと思っていたが、緊張もあって、また、ミスをしたくないというのもあって、特にフォアハンドでスピン(量)が多くなってしまった」

ドロップショットで揺さぶり、たびたび相手の逆をつくなど、ファンタジスタの片鱗は見せた。しかし創造性に溢れたプレーも、フォアハンドのハードヒットという土台があってはじめて引き立つもの。第2セット以降は思い切りのいいフォアも増えたが、単発的だった。

「ドロー運が悪いとも言っていられないので、勝ちたかった。今の実力で勝てないのは分かっているが、もうちょっといい試合もできたと思うし、チャンスもあったので、そこがくやしい。レベルの差を感じたこともくやしかった」

「くやしい」を連発する錦織。納得のいかない敗戦だったのだろう。しかし、世界1位に敗れてこれだけ本気で悔しがるのも、自分への見積もりの高さを示してると言える。これはまさに「糧」となる敗戦だった。

2010年6月22日 (火)

【2010年ウィンブルドン】フェデラーが苦しみながらも初戦を突破

 ロジャー・フェデラーが大苦戦の末、初戦を突破した。相手は60位のアレハンドロ・ファジャ(コロンビア)。過去の対戦成績はフェデラーの4勝で、失セットは0。お世辞にも難敵とは言えない選手との対戦だった。それが5セット、3時間18分の熱戦になろうとは。
 最初の2セットを続けて落としたフェデラー。第3セットには、4-4からのサービスゲームで0-40という大ピンチがあった。続く第4セットにも、4-5で相手のサービングフォーマッチという危機があった。フェデラーは明らかに体の切れが悪い。らしくないミスショットに表情を曇らせる場面が増えていく。トップ選手の典型的な負けパターンだった。このまま敗れたら、四大大会の前年優勝者としてはわずか5人目(オープン化以降)となる初戦敗退の屈辱を味わうところだった。
 それでも、ウィンブルドンで過去6度優勝の芝の王者は、どうにかこうにか、この苦境を乗り越えてしまう。
 試合後の会見でもフェデラーは「何度か負けを覚悟した」と打ち明けた。
「大変な試合だった。彼は本当にいいプレーをしていたし、僕は序盤から苦しんでいた。しかし、重要なのはこうして勝ち上がれたことだよ」
 険しい道をたどって2回戦に進んだ王者は、いつもの穏やかな笑顔を取り戻していた。

秋山英宏
Akiyama Hidehiro

秋山英宏

1961年生まれ。大学卒業後、フリーランスライターとしてスポーツ、レジャー分野を中心に雑誌、新聞で執筆活動を行う。1987年からテニスの取材を開始し、グランドスラムをはじめ、国内外の主要トーナメントを取材。テニス専門誌に多くの観戦レポート、インタビュー記事などを執筆している。日本テニス協会広報委員会委員。